2009年02月28日

【土・日曜日に書く】共産党が正論を唱えた時期

                                                                         論説委員・石川水穂 2009.2.21 
 ≪社党は韓国発表に疑問≫

 大韓航空機爆破事件(1987年11月)の実行犯、金賢姫元死刑囚と、拉致被害者で金賢姫に日本語を教えた田口八重子さんの家族との面会が近く実現する見通しとなった。
 この事件がソウル五輪妨害を狙った北朝鮮の爆破テロだと韓国捜査当局が発表したのは、21年前の88(昭和63)年1月15日だ。韓国側はこのとき、金賢姫の日本語指導員が拉致された日本人女性で、金正日書記(当時)から「恩恵」という朝鮮人名を付けられたことも明らかにした。発表には金賢姫も同席し、「私はだまされていた」と告白した。
 ここで思い出されるのは、韓国側の発表をめぐる旧社会党(現社民党)と共産党の論争だ。
 当時の土井たか子・社会党委員長は1月21日、来日中の米下院議員との会談で、「北朝鮮がやったといっているが、北にとってプラスになる行為と考えることはできない」と韓国側の発表に疑問を示した。これに対し、共産党の宮本顕治議長は1月22日の党内の会議で「大韓航空機事件は北がやったと確信している」と明言したと、機関紙「赤旗」が24日付1面トップで報じた。
 その後、社会党機関紙「社会新報」が1月26日付で「自白に疑問続出」と金賢姫の供述に疑問を投げかけたのに対し、赤旗は翌27日付で「テロは社会主義国にあるまじき行為」とする朝鮮問題研究者の論文を載せた。
 2月7日、「恩恵」に関するさらに詳しい情報が日韓捜査当局によって発表された。これに社会党が衝撃を受け、執行部の中に「拉致がはっきりすれば断固、北朝鮮に対し抗議すべきだ」という声が出始めたと、翌8日付産経は伝えている。
 その後も社会党内の動揺は続いた。3月7日、同党の井上一成国際局長が民放テレビのインタビューで、大韓航空機事件を「北朝鮮のテロ行為だ」と明言したのに対し、山口鶴男書記長は「国際局長がそのような発言をするはずがない」と反論した。だが、社会党の支持母体である全電通の山岸章委員長は、井上氏の発言を「常識論だ」と支持した。
 ≪梶山答弁を引き出す≫
 一方、共産党は日本政府から重要な答弁を引き出した。
 3月26日午前の参院予算委員会で、共産党の橋本敦氏は産経が昭和55年1月に報じた「アベック蒸発事件」について、竹下内閣の見解を質(ただ)した。これに対し、梶山静六国家公安委員長(自治相)は「昭和53年以降のアベックの行方不明は、おそらくは北朝鮮の(工作員による)拉致の疑いが濃厚だ。今後とも真相究明に全力を挙げる」と答えた。
 このことは産経と日経の夕刊にベタ記事で報じられただけだったが、実は、この梶山答弁は日本政府が拉致事件を北朝鮮の犯行だと公式に認めたものだった。
 当時の日本共産党は、昭和60年11月の党大会で北朝鮮を「覇権主義の一つの野蛮な典型」と批判して以降、北との断交状態が続いていた。こうした政治的な背景があったにせよ、この時期の共産党の活動は評価されてよいだろう。
 その後、共産党は平成12年11月の党大会に朝鮮総連幹部を来賓として招くなど、逆に北との関係修復への動きを強めている。
 ≪金賢姫との面会に期待≫
 田口さんの家族は、長男の飯塚耕一郎さん(32)と、兄で拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さん(70)らだ。八重子さんが拉致された昭和53年夏、耕一郎さんは1歳だった。繁雄さんに引き取られて育てられたが、生みの母の八重子さんのことは知らされなかった。
 それを知らされたのは、耕一郎さんが21歳のときだ。会社の海外研修でパスポートが必要になり、戸籍を取り寄せたところ、「養子」と書かれていた。育ての親の繁雄さんは、生みの母が八重子さんで、北朝鮮に拉致されて金賢姫に日本語を教えていたことを耕一郎さんに打ち明けた。
 金賢姫との面会の見通しが日韓外相会談で明らかになった今月11日、繁雄さんは「会うことが拉致問題を動かすインパクトになる。八重子のことについて詳しく聞きたい」と話した。
 一方、金賢姫は回想記「忘れられない女」(文春文庫)の中で、「彼女(田口八重子さん)は酒に酔うと招待所の窓の外を眺め『うちの子供はいま何歳かしら?』と言いながら指折り数え、何も知らずに連れてこられた身の上を嘆いた」と書いている。この本には、同じ拉致被害者の横田めぐみさんから日本語教育を受けたといわれる女性工作員「金淑姫」のことも書かれている。
 面会を機に、拉致被害者に関する情報が少しでも増えることを期待したい。
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